皆さんこんにちは。
甘霧庵でございます。
さて、無実の罪で死刑の判決が下され、
そして現代では考えられませんが、
即日、執行です。
しかも、
死刑執行の前にローマ兵からリンチを受けます。
ちなみに、
その時使われたムチがフラグラムと呼ばれるものでした。
これがかなりキツくて、
ムチの当たる部分に、獣の骨や金属の破片などが埋め込まれています。
これで打つと肉をズタズタに引き裂くことができます。
骨まで達することもあります。
で、このローマ兵が世紀の手のひら返しをします。
聖書によりますと
『百人隊長や一緒にイエスの見張りをしていた人たちは、
地震やいろいろの出来事を見て、
非常に恐れ、
「本当に、この人は神の子だった」と言った。』
シュッツのマタイ受難曲を聞きますと、
この部分だけ時代後退しているかのようです。
シュッツは古いルネサンスと新しいバロックの繋ぎ目に位置しています。
しかし、「本当に、この人は神の子だった」の部分は
それまでと違う古いルネサンス的な感じです。
思うにこの部分は懺悔の場面です。
さすがの新進気鋭のシュッツも懺悔の場面では革新的な芸術性よりも
保守的な芸術性を選択したのではないでしょうか。
そうしないと信者から叱られるかもしれません。
画像
クレタのセオファニスによって16世紀に描かれた、キリストの磔刑とそれを見守る人々が描かれた正教会のイコン。
アトス山のスタヴロニキタ修道院所蔵。
Theophanes the Cretan – Holy Monastery of Stavronikita, パブリック・ドメイン, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1288231による